前回は写真の解像度について説明しましたが、Wordでは写真の解像度をどのように扱っているのでしょうか?
Wordに挿入された写真はWord上に貼り付けられた大きさによって解像度が変わっていきます。写真を縮小すると解像度は高くなり、拡大すると低くなります。これは前回も書きましたが、解像度とは貼り付けられた大きさによって変化する相対的なものだからです。
ピクセル数(大きさ)の確認方法
写真のピクセル数(大きさ)はWindowsではプロパティで調べることができます。
写真が入っているフォルダを開き、写真を選択します。|ピクチャツール > プロパティ > プロパティ|と選択します。
あるいは写真を右クリックしてプロパティを選択します。
プロバティのダイアログが表示されたら詳細タブをクリックするとピクセル数を調べることができます。
- 大きさ 800×571
- 幅 800ピクセル
- 高さ 571ピクセル
- 水平方向の解像度 72dpi
- 垂直方向の解像度 72dpi
となっています。
一般的に写真の大きさはピクセル数で表されます。
ここで表示される解像度は写真が作成された時に想定された解像度になります。写真自体はピクセル数以外の大きさを持ちませんので、ここで想定された大きさで挿入されるということになります。幅800ピクセルで72dpi(ppi)の解像度写真の大きさは幅が約282mmになります。Wordの場合はページの大きさから余白を差し引いた大きさが挿入されるときの最大の大きさになりますから、ここでは150mmの幅で挿入され、54%に縮小されていることになります。この段階でWord上での解像度は135ppiです。一般的にカメラで撮影した写真は72ppi、96ppi、144ppiという解像度を想定して保存されることが多いと思います。画面キャプチャでは想定される解像度がないこともあります。水平方向と垂直方向の解像度があるのは、ピクセルが正方形でないデータがあるからですが、写真の世界ではピクセルは正方形なので気にする必要はありません。
Macの場合は情報でピクセル数を調べるか、カラム表示あるいはギャラリー表示でピクセル数を見ることができます。
情報を見るのは写真を選択して右クリック、「情報を見る」を選択します。
情報のダイアログが表示され大きさ800×571になっています。単位はピクセルです。
写真を選択したまま、カラム表示かギャラリー表示にする方が簡単です。
WindowsでもMacでも大きさの他に撮影日時やカメラの機種、シャッタースピードや露出、そしてGPSがONになっているカメラであれば撮影場所が緯度と経度で記録されています。
ピクセル数と解像度
写真のピクセル数が判れば、Wordファイルをどのように使うのかによって写真を縮小しなければならないのか、拡大できる限界はどれぐらいなのかを判断することができます。ネットプリントなどを利用する商用印刷では300〜350ppi以上、家庭用プリンターでの印刷であれば120ppi〜200ppi以上、コンピュータで見るだけであれば72〜96ppi以上が必要になります。
幅800ピクセルの写真を使う場合、商用印刷では幅を67mm(倍率24%)以下に、プリンターでの印刷であれば170mm(倍率60%)以下に、コンピュータで見るだけであれば282mm(倍率100%)以下になります。
計算方法は
(写真のピクセル数/必要な解像度)*25.4mm
になります。ただ、インチをmmに換算していくのは面倒なので写真の大きさを決める時にサイズをptで入力する方が簡単かもしれません。1インチは72ptですから、(写真のピクセル/必要な解像度)*72ptでも構いません。サイズの欄がmm表示になっていても25.4mmとあったらmmの単位を含めて72ptと入力すればWordがmmに換算してくれます。
解像度はあくまでも印刷結果の見た目の問題ですから、もっと大雑把でも構いません。1インチを2.5cmで換算すれば800ピクセルの写真を300ppiで使うためには800/300、約2.6ですから2.6*2.5cmで、おおよそ6cmぐらいという判断で十分です。
この解像度というのはネットプリントなどの商用印刷では大事な要素の一つになりますので注意が必要です。
でもここまで注意深く作業してもネットで入稿し、届けられた印刷物を見て何だかんだボケているということがあるかもしれません。場合によってはジャギーが目立つようなことがあるかもしれません。やっぱり、Wordではダメだ、Illustratorが必要だと思った方でお金に余裕がある方はAdobeのCreativeCloudを購入し、多くの時間を割いてIllustratorの使い方を学ぶのも一つの方法かもしれません。
しかし、プロの人達はIllustratorを使ってお金を稼ぎ、Illustratorを使う時間もたっぷり持っている人々なのです。
普通の?人にはWordが身近な存在です。そして使い慣れています。パソコンを買えばWordが付いてきます。とことん利用する方が得だと思います。
では、今まで書いたことのほかに解像度について注意しなければならないことはないのでしょうか?
保存時の解像度オプション
Wordは保存する時に写真の解像度を抑えてファイルの容量を減らそうとします。配置された写真の大きさを基準に220ppiの解像度に作り変えて保存してしまうのです。300ppiを保つような大きさで配置した写真も保存する時に220ppiになってしまいます。が、これはオプションで変更することができます。
保存時の解像度は上限で、その値より高い解像度の写真を設定値にするというもので、その値より低解像度の写真は変更はされません。
ファイルタブをクリックしてオプションから設定を変更できます。
詳細設定で上から1/3あたりの「イメージのサイズと画質」の項目を変更します。既定値だと「ファイル内のイメージを圧縮しない」のチェックが外れていて「既定の解像度」が220ppiになっています。
この「ファイル内のイメージを圧縮しない」にチェックを入れると保存するときに解像度は変更されません。」
古いバージョンだと330ppiの設定は無かった気がします。私が使っているWordはOffice365 Solo で逐次アップデートをしています。
ユーザーの中には使い勝手が変わるのを嫌がってアップデートやアップグレードを避ける人がいますが、セキュリティの面からも便利さからもアップデートした方がいいと思っています。確かにPDFを挿入できなくなるなど使い勝手が変わって困ることもありますが、それが世の中の変化だと思って慣れるようにしています。
ただ、アップデートやアップグレードで不具合が発生することもありますから、ネットなどで情報を集めてから不具合の有無を確かめることも必要です。
保存する時に解像度の設定をしたから大丈夫だと思いたいところですが、まだまだ落とし穴があります。
Wordには自動保存あるいは自動バックアップという機能があります。これをOFFにしておくと保存し忘れたり、パソコンがクラッシュした時に困ったことになります。あまりOFFにしておきたくありません。この機能がどのように影響するかというと、Wordで新規文書を作成し、既定値を変更せずに写真を挿入し縮小した後、しばらく経つと自動保存の影響で写真の解像度が落ちてしまうのです。
沢山の写真を配置するときに写真が重なり合ってしまうので一時的に小さく縮小しておきたくなります。保存時の解像度が220ppiのままだと縮小されている状態で保存されてしまうかもしれません。するとその大きさの状態で解像度が220ppiになってしまい、後で拡大した時にジャギーが目立つことになってしまいます。
ですから、新規文書を作成した時点で解像度オプションを変更しないと意味がありません。
自動保存・自動バックアップ
自動バックアップと解像度に関してちょっとした実験をしてみます。
自動バックアップと解像度に関してちょっとした実験をしてみます。新規文書を作成します。保存時の解像度は既定値の220ppiのままです。幅800ピクセルの写真を挿入し、144ptの幅に縮小します。144ptは2インチですから、この状態で写真の解像度は400ppiになります。
入直後にサイズを確認すると
- 幅 50.8mm
- 倍率 18%
- 原型のサイズ 幅 282.22mm
になっています。
このまま別の作業をするかコーヒーでも飲みます。(自動バックアップの既定のタイミングは10分間隔になっています。)
しばらくして写真のサイズを開くと
- 幅 50.8mm
- 倍率 100%
- 原型のサイズ 幅 50.8mm
に変わっています。
この写真を取り出してピクセル数と解像度を調べるとピクセル数440ピクセル、解像度220ppiになっていました。
写真を取り出す方法は保存したWordファイルの拡張子を「.zip」にしてから解凍し、中のWord>mediaフォルダに入っているimageファイルを調べたものです。
保存時に解像度を変更するかどうかは新規文書を作成すると同時に設定する必要があります。
さらに保存時の解像度オプション
挿入された写真に対して保存時の解像度オプションがどのように働きかけているのか、別の実験をやってみます。
保存時にイメージを圧縮しない設定で挿入した写真を縮小して保存します。
写真の大きさは元の大きさに保たれているはずです。
次に保存時の解像度オプションを既定値の220ppiに設定し直します。
次に同じ写真を挿入して、同じ倍率に縮小し、保存をします。2枚の写真は配置された大きさ50.8mm、倍率100%になっているはずです。
が、最初に挿入して一度、イメージを圧縮しない設定で保存した写真は
- 倍率 18%
- 原型のサイズ 幅 282.22mm
でした。解像度が変更されていません。
2枚目に挿入、縮小した写真は
- 倍率 100%
- 原型のサイズ 幅 50.8mm
になっています。これは解像度を変更するかしないかというフラグのようなものがファイルではなく、写真それぞれに書き込まれるからではないでしょうか。
ちなみに最初に挿入した写真をコピーして既定値220ppiのままの新規文書に貼り付けて保存しても解像度は変化しません。解像度オプションを変更した後から挿入した写真に対して、変更が有効になると考えられます。
作業中は解像度を変えずに拡大縮小を繰り返し、ファイルが仕上がった時点で写真の解像度を調整するという方法は使えないことになります。
Wordには配置された位置と大きさで写真を置き換える機能があります。同じ写真を置き換えると解像度はオリジナルのままです。
この機能を使って、ファイルが仕上がった時点で解像度オプションを適切な値に変更し、写真を置き換えるという方法も考えられますが、トリミングした写真、調整をした写真ではうまくいきません。再度トリミングし直すことになります。
実際のレイアウト作業で全くトリミングしない写真はほとんどないので、この方法は限られた写真以外では使えません。
ここでは幅800ピクセルの写真を用いましたが、最近ではスマホで撮った写真でも幅3000ピクセル以上は当たり前で容量もMB単位になっています。トリミングなしで5cm程度に縮小するとオーバークオリティでファイル容量が大きくなってしまいます。
極端にオーバークオリティになるような写真はあらかじめピクセル数を変更して、挿入する方がよさそうです。ピクセル数の変更は厳密ではなくやや大きめであればそこそこにしていいと思います。後はWord上で大きさを調整していきます。
大きくトリミングする必要がある写真も先にトリミングしておいた方が容量の節約になります。
元の写真のピクセル数が分かっていれば、拡大縮小してもピクセル数をインチに換算した写真の大きさで割れば解像度を計算することができます。
あるいは解像度をmmに換算した数字を用いれば、、、
ppi は pixels per inchの略で1inch=25.4mmですから
- 400ppi ≒ 16 pixels per mm
- 350ppi ≒ 14 pixels per mm
- 300ppi ≒ 12 pixels per mm
- 220ppi ≒ 9 pixels per mm
- 150ppi ≒ 6 pixels per mm
- 120ppi ≒ 5 pixels per mm
- 96ppi ≒4 pixels per mm
- 72ppi ≒3 pixels per mm
になります。
トリミングと解像度
拡大縮小しただけの場合は上のような計算で問題ないのですが、トリミングしたものを拡大縮小するとちょっと面倒になります。大雑把なトリミングは挿入前に済ましておきますが、図形でトリミング(マスク)するとなるとWord上でしか作業できません。
配置された写真を拡大縮小してからトリミングした場合はトリミングする直前の解像度が保たれますが、トリミングしたものを拡大縮小すると解像度が変わり、元の写真のサイズが表示されなくなります。トリミング中でもサイズが表示されますが、このサイズはトリミングサイズを表していて、トリミングサイズ内のピクセル数を調べる術がないのです。元のサイズとトリミングサイズを目分量で測りおおよそのピクセル数を割り出すしかありません。
PDF書き出しと解像度
PDFに書き出すときも要注意です。
PDFに書き出す方法はファイルタブから「名前を付けて保存」を選択し、PDFを選びます。
そのまま保存せずに「その他のオプション」をクリックします。
「ツール」をクリックして「図の圧縮」を選択します。
「図のトリミング部分を削除する」はチェックが入ったままにします。
解像度は「高品質」を選べなくなっています。オプション>詳細設定の保存時の解像度と連動しているのかしていないのかよくわかりません。ファイルによっては「高品質」を選べることもありますし、「電子メール用」になっていることもあります。色々と試してはいるのですが、残念ながらどのような仕組みなのか理解できていません。商用印刷では330ppiあれば十分なので「HD(330ppi)」にしています。用途に応じて選択してください。
この辺りは階層が深く、分かりづらいところです。
最終仕上がりがPDFであれば、Wordでの作業中は元の画像の解像度を保ちながら作業をして、PDFに書き出すときに解像度を設定することができます。
解像度はとても理解が難しい部分です。低解像度の写真をWordに挿入して500%の拡大表示にしても結構、綺麗に見えてしまいます。それはコンピュータがどんな画像であってもできるだけ綺麗に表示するように頑張っているからです。解像度不足の問題はモニターでの見た目ではよくわかりません。そもそもモニターの解像度自体があまり高くなく、モニターで写真を表示する仕組みと印刷する仕組みが全く違うのです。印刷してみなければ判らない世界なのです。
商用印刷を目的としたチラシなどではお金もかかることですし、解像度の問題を避けることはできません。
どのような用途で使うのかということと用紙の大きさ、写真の数と配置するときの大小関係を勘案して、写真を扱えるソフトで大雑把な大きさを合わせてからWordに挿入して調整するという手順がいいと思います。
用紙の大きさと解像度の目安
A4サイズを頭の片隅に置いておくのがいいでしょう。A4は210*297mmです。もっと大雑把に20*30cmでも構いません。A4縦で幅一杯に写真を挿入する場合はトリミングされた状態で幅方向のピクセル数が
- 350ppiでは約3000ピクセル
- 300ppiでは約2500ピクセル
- 220ppiでは約1800ピクセル
- 120ppiでは約1000ピクセル
必要になります。
写真の幅が10cmであればピクセル数も半分に、5cmであれば1/4になります。
A3サイズはA4の紙を2枚並べたサイズになります。297*420mmです。
A5サイズはA4の紙を半分に折ったサイズになります。148*210mmです。
標準的なハガキサイズはA6より少し幅が狭く、100*148mmです。
ポイントとミリメートル
1ptは約0.35(0.35277…)mmです。
A4サイズは大雑把に600*840ptです。
- 10cmは約300pt
- 5cmは約150pt
- 1cmは約30(28.346…)pt
になります。
ポイントという単位に慣れておくのもいいと思います。
1990年代のDTPの世界ではmmとptの両方が表記されている定規がありました。尺貫法からメートル法に移行した日本ですが、コンピュータの世界ではヤード・ポンド法に引きづられて面倒なことになっています。