|12| 行送り・行間 2   固定値

|12| 行送り・行間 2    固定値

行間隔設定のまとめ

前回で行間隔の設定を色々と書きましたが、表にまとめてみます。

「固定値」以外は同じ大きさのフォントでも異なるフォントを混在させると行によって行間隔が異なる可能性があります。例えば、MS明朝の文字列の中にメイリオの文字を混在させると全体の行間隔がバラバラになってしまいます。

また、大きな文字と小さな文字はそれなりにバランスのいい行間隔が求められますし、名刺などにプリントする社名や住所、電話番号などのインフォメーション部分は行間隔を狭くしたいのですが、固定値以外では上手く設定できないことが多くなります。

ですから、前回も書きましたがガンタレ流儀では「固定値」しか使いません。それはIllustratorなどのプロ用ソフトを使うデザインの世界ではごく普通のことなのです。

文字の上が切れる、下が切れる。

Wordでは既定値の場合、文字はグリッド線とグリッド線の高さの中央に配置されます。それを「固定値」に設定すると文字の位置が下がります。
そして設定した行間隔の高さに収まらない部分は切れてしまいます。

文字の大きさと行間隔が同じ場合は理屈上、切れないはずなのですが、漢字の上の部分が切れてしまいます。フォントによっては「g」の下端が切れる場合もあります。游明朝DB48ptでは行間48ptで漢字の上端と「g」の下端が切れています。行間51ptで漢字の上端は切れなくなりますが、「g」の下端はわずかに切れています。52ptで「g」が切れなくなります。

「固定値」で文字が下がりますが、どれぐらい下がるかというと行間隔の8%程度の位置までしか下がりません。上の8%程度ははみ出してしまうのです。
下端が切れるのは「g」などの文字がフォントの大きさより、下にはみ出して配置されているからです。

行間隔が十分でも設定した行間隔の高さに収まらない部分は切れてしまいます。日本語の場合は問題がないのですが、アルファベットの「y」や「g」などの小文字でディセンダ(大文字の下端より下側の部分)が長いフォントには切れるものがあります。行間が狭くなるほど切れるフォントが増えていきます。

Illustratorなどのソフトでは文字が切れるということはなく、次の行の文字と重なるような仕様になっているので、Wordを使ってみてとても戸惑った記憶があります。

インストールされているアルファベットの中でディセンダが切れるものを探してみました。10.5ptの大きさで行間は18ptです。
「fgjpqy」という文字列を入力してフォントを変えながら調べてみました。グリッド線は文字の位置をわかりやすくするために表示しています。ページ設定での行送りが既定値18ptのままなので18ptごとに引かれています。同じフォントの右側は文字の位置を上げて下端が切れないようにしてあります。「Century」は切れていないので上げてありません。
ハンドライト(手書き風)の文字はディセンダが長いようです。

でも、安心してください。PDFにすると切れていた部分もちゃんと見えるようになります。

48ptの文字を40ptの行間隔にしてみました。Wordで見ると悲惨な結果になりますが、PDFにしたりプリントするとちゃんと重なっています。
もちろん、テキストボックスの高さが足りない場合は文字が切れてしまいますから注意してください。

このWordの仕様は困りもので、編集作業中に行間隔を確認するのが難しくなりストレスが溜まります。Power PointやPublisherでは画面上も重なって表示されますから、Wordもそのように修正してほしいものです。

行間隔を調整する

名刺の住所などインフォメーション部分は行間隔を狭くした方がすっきりとします。

社名と郵便番号の間は少し空いていますが、それ以下の5行は行間が詰まっています。7ptの文字に対して125%程度の行間にしています。
実際には7.5pt、8pt、9ptと段落(ここでは行ごとになります)ごとに異なっています。
Wordで編集しているときは「g」の下端が切れていますが、前に書いたようにプリントすると切れないので気にしません。

日本語主体の場合やアルファベットだけの場合は行間隔を調整する必要はないのですが、漢字主体の行、数字主体の行、アルファベットだけの行が混在する場合は調整が必要になります。
行間隔を一定に見せるには行と行の間の白い部分の高さが一定に見えるよう見た目で調整します。

 

郵便番号は社名との空きを保つために11ptの行送りです。

数字だけの行ではディセンダの分、文字の下側が空いて見えます。アルファベットで小文字が多ければアセンダ(小文字のxの上端より上の部分)の分とディセンダの分、文字の上下が空いて見えます。

上は住所以下、8pt送りです。郵便番号と住所の行間が広く、住所と電話番号の行間が狭く、電話番号とURLが広く見えます。

下は行間隔を調整したものです。
住所の行は行間8pt、電話番号は9pt、URLは7.5pt、アドレスは8ptです。固定値で文字が下に下がっていますから、行間はほぼ上の行との間隔になり、調整しやすくなります。文字の位置が中央にあると上の行だけでなく下の行にも影響するので調整が面倒になります。これも固定値のいいところです。とWordでは行間が0.5pt単位でしか調整できないので文字の大きさが小さくなればなるほど難しくなります。

フォントの位置、文字間隔

日本語フォントに含まれるアルファベットや数字は本文日本語とのバランスを考え、漢字より小さめにデザインされています。

 

サンプルの游明朝はWindowsにインストールされている明朝体の中で一番綺麗なフォントだと思います。字游工房で開発され、そこのホームページにも書いてありますが、フォントの太さによってもアルファベットの大きさや位置を微妙に変えてあるそうです。

游明朝 Demibold 48ptに設定し、漢字と数字の高さを測ってみました。「朝」は約45pt、数字は約35ptの高さになっていました。全ての漢字が同じ高さではありませんので一例としてみてください。漢字の大きさ、アルファベットの大きさはフォントによっても異なります。

  

游明朝は美しいフォントで、本文では漢字と数字の大きさが気になりませんがポスターなどで「8月23日」のような日付を大きな文字でレイアウトするとどうしても数字が小さく見えてしまいます。このような時には数字を大きくするのですが、同時にベースラインも上がってしまい漢字と数字の上下が揃わなくなります。ここでは数字部分を下げて調整しています。

1行目は48ptの文字列、2行目は数字を55.5ptにしたもの、3行目はベースラインを3pt下げ、さらに数字と漢字の間を狭くしたものです。こうすることで引き締まった感じになります。

 

フォントの位置を下げる方法を説明します。

 

下げるフォントを選択して|ホーム > フォント|右下のダイアログボックスをクリックしてダイアログボックスを表示させます。「詳細設定」タブをクリックして「文字幅と間隔」の「位置」を「標準」から「下げる」に変えます。「間隔(Y)」が3ptになりますから、必要な数値に置き換えます。ここは0.5pt単位で入力できます。

段落の設定ではないので選択された文字だけが下がります。アルファベットの単語などの場合は1文字だけ上げ下げすると文字の流れが凸凹になるのでアルファベットの文字列単位で調整するのがいいでしょう。あるいは日本語を含めた全ての文字列を上げるという方法もあります。

 

 

文字間隔を狭める方法です。

文字間隔を狭める文字列の内、最後の1文字を残して選択します。サンプルでは「8」と「月」の2文字なので、「8」を選択します。
|ホーム > フォント|右下のダイアログボックスをクリックしてダイアログボックスを表示させます。「詳細設定」タブをクリックして「文字幅と間隔」の「文字間隔」を「標準」から「狭く」に変えます。「間隔(B)」が1ptになりますから、必要な数値に置き換えます。ここは0.1pt単位で入力できます。
「8月」の間は11pt、「月2」は6pt、「3日」は11ptにしてあります。

漢字の大きさ、アルファベットの大きさはフォントによっても異なりますし、同じフォントでも文字によって異なります。上げ下げするpt数や文字間隔のpt数は見た目で決めていくことになります。