|11| 行送り・行間 1

|11| 行送り・行間  1

Wordを使って既定値(初期設定値)のまま文章を入力していて、フォントを游明朝からメイリオに変えると、突然、行と行の間が拡がってしまったり、游明朝を11ptにすると行と行の間が拡がってしまったという経験を多くの方がお持ちだと思います。
なぜそうなるのか、どうすれば思い通りにできるのかというお話です。

Wordの行送り・行間の設定はとても複雑で、ページ設定による行送りと段落ダイアログによる行間の設定の組み合わせになります。

「行送り」、「行間」という言葉を使いますが、出版業界やデザイン業界では「行送り」と「行間」は異なる意味を持ちます。ですが、Wordの世界ではほぼ同じ意味で使われていると考えてください。

ページ設定による行送り

1行の行送り値はどのように設定されているのでしょうか?

|レイアウト > ページ設定|から右下のダイアログボックスをクリックしてダイアログを表示させ、「文字数と行数」タブをクリック、「行数」の項目を見ると「行数」と「行送り」を編集できるようになっています。「行数」を増やすと「行送り」の値が減り、「行送り」の値を増やすと「行数」が減ります。ここで設定した「行送り」の値がその文書の全ての文字列に反映されます。テキストボックス内の文字列にも反映されます。「行送り」の既定値は18ptに設定されています。

一方、文字列の中にマウスポインタを入れて|ホーム > 段落|から右下のダイアログボックスをクリックしてダイアログを表示させ「インデントと行間隔」タブをクリックし、「間隔」の項目を見ると「行間」が「1行」、「間隔」は空欄で表示されます。ここでの「1行」とはページ設定での行送りの値になります。ここで「1.5行」を選択すると27ptの行間隔になり、2行を選択すると36ptの行間隔になります。ただし、マウスポインタが挿入された段落だけの設定ですから、他の段落は「行送り」の値である18ptの行間隔のままです。

「1.5行」に設定した段落が最後の段落だった場合は次の段落にも同じ設定が引き継がれていき、行間隔は27ptになります。

 

Wordの既定値を変更せず、文字列を入力してみます。背景のラインは行間隔をわかりやすくするためにグリッド線を表示しています。グリッド線は「行送り」の既定値の18ptごとに引かれています。

「グリッド線」とは行送り値の間隔で引かれたラインのことで|表示 > 表示|から「グリッド線」にチェックを入れると表示されます。

上の3行はWordの既定フォントと既定の大きさの「游明朝」10.5ptです。同じ大きさのままフォントを「メイリオ」にすると行間隔が2倍に拡がります。

 

游明朝のまま、大きさを10.5ptから11ptにあげると行間隔が2倍に拡がります。

 

以前の既定フォントだった「MS明朝」にすると11ptにしても行間隔は拡がりません。

 

「行送り」を既定値のままでフォントをメイリオにして、文字の大きさを変えて行間隔がどのように変化するか試してみます。

9ptまでは行間隔が1行ですが、10.5pt以上だと2行分になります。もっと大きくなると行間隔は3行分になります。同じ行間隔の場合、文字が小さい方が上下の空きが大きくなるという結果になり、デザイン上は好ましくありません。フォントの大きさが大きいほど行間も広くなるのがデザインの原則です。

そして行間隔が1行から2行分に変わる文字の大きさはフォントによって異なることがわかります。
行送り値が18ptの既定値の場合、10.5ptの游明朝やMS明朝では必要とされる行間隔が18ptより小さく、10.5ptのメイリオでは18ptより大きいと考えられます。
文字の大きさを11ptにした場合、游明朝では必要とされる行間隔が行送り値より大きく、MS明朝では小さいということになります。

段落ダイアログでの行間の設定。

文字列を扱うアプリケーションでは行間隔に限らず、フォントや大きさなども前の段落の設定を引き継いでいきます。

段落とは文字列の先頭から改行までを、その後は改行後の文字列の先頭から改行までを言います。「Enter」キーを押すと改行コードと呼ばれる文字列が挿入され、Wordでは改行コードを記号として表示することができます。

 

Wordでは行と行の間隔はページ設定の行送り値だけではなく、段落ごとに行間の設定ができます。

文字列の中にマウスポインタを入れて|ホーム > 段落|から右下のダイアログボックスをクリックしてダイアログを表示させ「インデントと行間隔」タブをクリックすると行間を設定することができます。ここでの「行間」はページ設定の「行送り」と同じ意味になります。

「1ページの行数を指定時に文字を行グリッド線に合わせる」にチェックが入っているかどうかで変わります。既定値ではここにチェックが入っています。

 

画面キャプチャはMS明朝10.5ptで「行間」は「1行」のままですが、上段の4行は「文字をグリッド線に合わせる」にチェックが入っている既定値のままです。下段の4行は「文字をグリッド線に合わせる」のチェックを外したものです。

下段4行の行間がMS明朝10.5ptで必要とされる行間隔だと思われます。
ここでは仮に必要とされる行間隔を「フォントによる設定値」と言うことにします。

段落のダイアログで「文字をグリッド線に合わせる」のチェックを外してみます。

 

MS明朝
游明朝
メイリオ

段落ごとに文字の大きさを変え、「文字をグリッド線に合わせる」のチェックを外した方が文字の大きさによって行間が一定の割合で広がり綺麗なのですが、文字によって行間が異なるという欠点が出てきます。

 

 

 段落のダイアログボックス内で行間を設定できるのですが、行間で「1行、1.5行、2行、最小値、固定値、倍数」の6種類から選択できます。6種類の設定はそれぞれどのように違うのでしょうか?

1行、1.5行、2行

「1行、1.5行、2行」はページ設定での行送り値、あるいは「フォントによる設定値」の1倍、1.5倍、2倍の値になります。

段落ダイアログで「1ページの行数を指定時に文字を行グリッド線に合わせる」にチェックが入っているとページ設定の行送りの値の1倍、1.5倍、2倍になります。行送りが既定値の18ptだとすると「1.5行」で27pt、「2行」で36ptの行間隔になります。

「1ページの行数を指定時に文字を行グリッド線に合わせる」のチェックを外すと「フォントによる設定値」の1倍、1.5倍、2倍になります。フォントによって行間の値は変わります。

ただし、マウスポインタが挿入された段落だけの設定ですから、他の段落は「行送り」の値である18ptの行間隔のままです。「
1.5行」に設定した段落が最後の段落だった場合は次の段落にも同じ設定が引き継がれていきます。

最小値

「最小値」は「間隔」欄に入力されたpt数で行送りされるのですが、「フォントによる設定値」が行送りの値より大きい場合は「フォントによる設定値」で行送りするというものです。「文字をグリッド線に合わせる」にチェックが入っていると「1行」が最小値と見なされ、変化はありません。
「文字をグリッド線に合わせる」にチェックが入っていると「ページ設定」の「行送り」が基準になり、チェックを外すとフォントの要求値が基準になるということです。

「最小値」とは「フォントによる設定値」が行間隔で設定された値より大きければ要求値を優先しますよということで、「フォントによる設定値」と同じことになります。

 

 

MS明朝の文字列の一部をメイリオにしたものです。大きさは全て10.5pt、行間は「最小値」で間隔は14ptにし、上段4行は「文字をグリッド線に合わせる」にチェックを入れ、下段4行はチェックを外してあります。それぞれ3行目にメイリオを設定したフォントがあります。メイリオを入れた行の上下の間隔が拡がっているのがわかります。上段は既定値の「1行」と変わりません。

「最小値」でも「フォントによる設定値」が影響して行間隔が一定になりません。

「フォントによる設定値」

このように「フォントによる設定値」が異なっていて、文字列を綺麗に並べることが難しくなっています。

 

 

フォントによってどれぐらい違うのか調べてみました。調べる方法は100ptの同じ文字を2行入力し、「行間」は1行、「文字をグリッド線に合わせる」のチェックを外して1行目の文字の上端から2行目の文字の上端まで長方形を描きます。Wordの単位表示を「mm」から「pt」に設定を変えて長方形の縦の長さを測るというものです。原始的で誤差も出ますが100ptの文字ですからそこそこの結果は得られたと思います。

 

私はデフォルトのフォント以外に「源真ゴシック」というフリーのフォントもインストールしてあるのでそのフォントもリストに入っています。また、日本語以外のフォントはどうなんだろうと思い、「Javanese Text(ジャワ文字)」と「Edwardian Script ITC(アルファベット)」も計測しています。

「Meiryo  UI」は「メイリオ」のUI(ユーザーインターフェース用)文字、「Yu Gothic UI」は「游ゴシック」のUI文字、「MS UI Gothic」は「MSゴシック」のUI文字でそれぞれ漢字部分は同じ字形を使っていますが、最小値(フォントによる設定値)は異なっています。
大きいものでは200%を超えるものもあります。

固定値

Wordの行間設定は複雑すぎます。
私がWordで最初につまずいたのは行送り設定でした。では、どうすればフォントによらず自分が思うような行間の設定ができるのかというと「固定値」以外にはありません。

 

 

「固定値」は「間隔」欄に入力したpt数で行送りします。上の画面キャプチュアは「固定値」の間隔を全て18ptに設定し、3種類のフォントと5種類の文字の大きさを設定してありますが、行送りは一定です。文字の大きさやページ設定の「行送り」に影響されませんし、「文字を行グリッド線に合わせる」のチェックの有無にも影響されません。行間隔の値がフォントの大きさより小さい場合は文字が切れてしまいます。しかし、フォントによって行間隔が変化することはありません。

これはIllustratorのようなグラフィックソフトではごく普通のことです。文字の大きさによって適当な行送り値が設定されますが、デザイナー達は必ず自分自身で確認し、行送り値を調整しています。同じ大きさの文字列であっても字形のデザインによって、あるいは本文なのか住所などの情報なのかなどの内容によって行間隔を調整することがデザインにとって大切なことだからです。

ですからガンタレ流儀では「固定値」を設定しているのです。

本文の一般的な行送り値は日本語でフォントの大きさの160〜180%、英文で150%程度だと言われています。英文の行間隔が狭いのは小文字の上下の空き量が大きいからです。
実際にどれぐらいの行間が妥当なのかは、文字列の役割によっても異なってきます。