「最近のスマホやタブレットはスクリーン解像度が高い」とか「この写真は解像度が低い」というように解像度という言葉は色々な意味で使われています。一般にピクセル数が多いと解像度が高いというように使われていますが、解像度とはなんでしょうか?
テレビの世界では4Kとか8Kというテレビもありますが、普通のハイビジョンテレビのピクセル数は1920*1080ピクセルになっています。40インチのテレビでも100インチのテレビでも変わりません。100インチのテレビはピクセル自体が大きくなっているだけです。ピクセル数が変わらないので大きなテレビは画像が荒くなっているわけですが、離れて見ることが多いので荒さが気にならないのです。
Webの世界では写真の1ピクセルをモニターの1ピクセルで表現することが原則でピクセル数の少ない写真を大きく表示するのが難しく、この記事に使われている画像はWordのようなワープロソフトに写真を貼り付け、拡大縮小したものを画面キャプチャしています。実際に使ったアプリはMacユーザーなのでPagesというアプリケーションです。写真そのもののデータではありません。
また、解像度の低い写真でもWebでは綺麗に表示されるので判りやすくするためにかなり低解像度の写真を使ってキャプチャしています。
ピクセル
上の車の写真右側はフロントガラスの40*40ピクセルの範囲をおおよそ10倍に拡大してあります。色がついた四角形がたくさん並んでいますが、この小さな四角形をピクセルと言います。デジタル画像は小さな四角形の集まりになっています。一般的に写真のピクセルは約1600万色の中から1色だけを表示することができます。1個のピクセルに2色以上の色を表示させることはできません。ですからピクセル数が多ければ多いほどきめ細やかな表現が可能になります。反面、ピクセル数が多くなればデータ容量も増えていきます。
解像度の話をするときにドットという言葉もよく使われます。ピクセルと同じように小さな四角形ですが、白か黒の2色のうち、1色しか表示できません。
上の4点はピクセル数が異なる写真を同じ大きさにレイアウトしたものです。
同じ大きさでピクセル数が少ない写真を解像度が低いと言います。
解像度が低くなるととジャギー(ピクセルの四角形)が目立つようになると同時にコントラストが弱くなりぼやけて見えます。
コントラストが弱くなるのは画像処理ソフトで解像度を落とすとき、例えば4ピクセル分を1ピクセルにするとき、4ピクセルの色の平均値を取っていくと、一番明るい色、一番暗い色がなくなってしまうからです。明るさ暗さだけでなく鮮やかさも失われてしまいます。
解像度
解像度の単位はppi、又はdpiを使います。
ppiはpixels per inch、dpiはdots per inchからきています。意味は辺方向1インチあたりのピクセル数、ドット数です。1インチは25.4mm。
上の大きい写真を2インチ(5.08cm)の正方形、小さい写真を1インチと仮定すると左側の写真は36ppi、小さい写真は72ppi、右の写真は72ppiになります。
小さい写真は左側の写真と同じもので大きさを1/2にしてありますが、左側の写真の方がジャギーが目立ちます。これは人間の目が小さな形の変化をどこまで見分けられるかという能力によります。個人差はありますが、ピクセルの大きさが小さいほどジャギーは目立ちません。
印刷における解像度は同じピクセル数の写真でもWordなどに貼り付ける大きさによって変化する相対的なものになります。
解像度とはピクセル数ではなく、ピクセル密度だと考えてください。同じ人口でも地域の広さに応じて変化していく人口密度のようなものです。人口密度と違うところは人の大きさはあまり変化しませんがピクセルの大きさは変化するところです。
写真を印刷するためには高い解像度が必要になります。
一般的にはネットなどで印刷(オフセット印刷)を依頼する場合、350ppi以上を求められます。インクジェットプリンターやレーザープリンターでは144〜200ppiとマニュアルに書かれていることが多いようです。
この値は絶対的なものではなく印刷した結果の見た目で判断すればいいのですが、写真によっても変わるものです。薄曇りの空だけが写っているような写真ではやや低い解像度でもそれほど気になりませんが、金属でできた緻密な機械やジュエリー、直線的な輪郭が多い写真などは高い解像度の方がいい結果を生みます。ネット印刷では入稿の注意事項に必ず書いてありますのでよく読んでください。
私の体験からネット印刷では300ppi、インクジェットやレーザープリンターでは120ppiを基準にして問題はないと思います。高解像度すぎても印刷する機械が対応できませんし、ファイルサイズが大きくなりすぎます。
PhotoshopやWindowsの3Dペイントで解像度を変えることができますが、一度、解像度を落とした写真を元の解像度にしても良い結果は得られません。解像度を高くするということはピクセルを増やすことになるのですが、原理としてはピクセルとピクセルの色の平均値を使ってピクセルを増やしていくのでシャープさに欠けます。写真の内容や解像度を高くする程度にもよります。
見た目に大きな違いがなければ問題はないのですが、無闇に解像度を落とすことは避け、オリジナルのコピーを取ってから作業した方が良いと思います。
印刷業界で働いている頃は「あるものは消せるけど、ないものは作れない」とよく言われていました。
右側の写真は左側の写真を144ピクセルから72ピクセルにした後に144ピクセルにしたものです。極端な例ですが、かなりボケています。
画像処理はAffnity Photoというアプリケーションを使っています。アプリケーションの設定によってはもっと綺麗に仕上げてくれますが、元に戻ることはありません。
モニターでの表示
Webの世界ではサイトの写真を表示するエリアが横幅800ピクセルだとすると横幅800ピクセルの写真を貼り付ければ、エリアいっぱいに表示されることになります。400ピクセルの写真であれば半分の大きさになります。
3Dペイントなど画像処理ソフトで写真を開き、ズームしてモニターの中で大きく表示したり、小さく表示することができます。これは写真そのものの大きさやピクセル数を変えているわけではなく、拡大ズームした時は写真の1ピクセルをモニターの複数のピクセルで表示していることになります。写真のピクセルの大きさの2倍に相当するする大きさでは写真の1ピクセルをモニターの4ピクセルで表示し、逆に1/2の大きさに縮小ズームすると写真の4ピクセルをモニターの1ピクセルで表示していることになります。
実際にはもっと複雑ですが、原理として理解してください。
同じ13インチモニターでもパソコンによってピクセル数が異なることがあります。ピクセルの大きさが違うということです。ピクセル数が多い場合、メニューバーの文字は小さくなりますが、表示範囲は広がります。ピクセル数が少ない場合、メニューバーの文字は大きくなりますが表示範囲は狭くなります。
モニターではピクセル数が大きさ(長さ)の単位、印刷物などは絶対値であるcmやinchが大きさの単位になります。
Webでは写真の1ピクセルをモニターの1ピクセルで表示すると書きました。このことをドットバイドットと言います。
最近では高解像度のモニターを搭載したパソコンも増えてきました。このようなパソコンでドットバイドット表示すると文字が小さく見にくいものになってしまいます。そこでスケーリングという方法できめ細やかな表示をするようになっていますが、Webサイトでは写真の1ピクセルをモニターの4ピクセルで表示するというような方法を取ってきました。しかし、この方法では高解像度モニターの良さを発揮できません。
このサイトではWordPressを使っていますが、高解像度モニター用にピクセル数の多い写真のデータを作ってそれを表示するというプラグインを見つけたので、とても助かっています。
モニターと印刷の違い
モニターは1ピクセルで1色しか表示できませんが、1600万色から様々な濃淡を持つ色を表示できます。一方、印刷の原理としてはシアン(緑みを帯びた明るい青)、マゼンタ(赤紫)、イエロー、ブラックの4色を刷り重ねることで様々な色を表現します。印刷インクは濃淡を持ちませんのでインクをつける面積で濃淡を表現します。薄いグレーの場合は黒の小さな点を印刷します。中間のグレーであれば白と黒の面積比が50:50になるように印刷していきます。
モニターではそのピクセル数より写真のピクセル数が同じかそれより多ければ綺麗に見えますが、印刷では解像度が低いとジャギーが目立つようになります。
とても荒っぽいのですが、モニターで表示される状態と印刷される状態の模式図です。
左側はピクセルの濃淡で表現、右側は白と黒との面積比による表現です。左側のグレーのピクセルはその濃度を右側の点の面積に応じて設定しています。
白黒の面積で作る階調表現より濃淡があるピクセルの方が滑らかに見えます。印刷では白と黒の2色しかなくコントラストが強いので面積比で濃淡を表現しようとすると人間の眼で識別できないほどの小さな点でなければなりません。印刷所ではプレートセッターと呼ばれる機械で0.15mm四方の中にレーザーによる0.01mm前後の小さな点を連ねて、200段階ぐらいの面積を持つ様々な大きさの点を作っていきます。
最小の点がどれぐらいの大きさなのかを表すのもプリンター(出力)解像度という言葉を使います。こちらはピクセルではなく濃淡を持たないドットなのでdpiという単位を使います。600〜3000dpi超まで様々な性能のものがあります。
インクジェットプリンターやレーザープリンタでは小さな点の配置方法がプレートセッターとは異なりますが、インクやトナー自体が濃淡を持つことはありませんから、4色で印刷するという原理は変わりません。
6色、7色のプリンターも4色印刷の原理は変わらず、より高い表現をするために4色を補間するものと考えてください。
上の写真は実際の印刷物をスキャンし、拡大したものです。使ったスキャナの限界もあり、綺麗な点にはなっていませんが、面積が異なるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの小さな点でできていることがわかります。
シアンとマゼンタが重なったところは青紫になり、マゼンタとイエローが重なったところは赤になり、イエローとシアンが重なったところは緑になっています。重なっていなくても形が識別できないような小さな点は人の目の中で混ざり合うというか、絵の具を混ぜたような色に感じているのです。